とある日本語学校から、漢字を30回ほど書かせる宿題が出ているのを見ました。やっている子ども、丁寧に書こうとするのは最初の5回くらいまでで、あとは終わらせるのに必死のなぐり書き。うーん、残念。
何度も反復して練習するのが大切、と謳う有名な教育家もいらっしゃるようですが、我が家の場合、一つの漢字に10分もかけていられません。
我が家のスタンスは、いずれコンピューターに日本語を入力する機会があったときに、スペースキーが与えてくれる選択肢の中から正しい漢字が選べるようになってくれていればよい、でも今は脳の発達のために漢字を書く練習を毎日少しでもやっておくれ、というもの。
欲を言えば、書ける漢字も年と共に増えてほしいけれど、我が家のケースでは、無理に覚えさせようとする親からの余計なプレッシャーが逆効果なので、一年生の漢字が書けないからといって、おこらない、おこらない、日本語と向き合ってくれているだけで万々歳だぞ、と自戒しつつ、
1.読書で頻繁に漢字に触れさせる
2.お手本を見ないで漢字を書かせるミニテストを出来る限り実行する
ことにしています。お手本を見ながら繰り返し書くより、何も見ないで自分で思い出しながら書く行為が暗記を強化しているように思えます。
その他、詩と文を書き取ったり、文を書いたり、ヨミガナ用紙で一学年前の漢字を復習したりして、今までに習った漢字に頻繁に触れさせます。
「漢字ヤロウ」の書く練習用紙には、補助線が入っていません。
理由の一つに、製作者がその技術に乏しい(正直な理由)。ええと、息子は漢字を繰り返し書いて練習するときに、退屈しのぎに枠いっぱい大きく書いたり読めないくらい小さく書いたりするのです。そんなのやめさせろ、という指導者もいらっしゃるかと思いますが、まあ、クリエイティブでいいんじゃない? そんなわけで、十字線が邪魔なようなのです(やや建前の理由)。
書道をするときにも用紙に十字線が入っていないから、特になくてもよいのでは?とも思います。過保護はよくないし(建前が色々並ぶともっともらしくなる)。
息子がひらがなに興味を持ち始めたころ、なぞり用紙に字をよくなぞっていました。すると、その後に書いた字がきれいになっているのに気が付きました。漢字もなぞらせることで字のバランスを覚えさせるほうが得策である気がしています。
小林(2014)は、「漢字練習用のノートはだいたい十字に補助線が入っていますが、これでは部首のバランスがとりづらい」と述べています。その代わり、『かんむり』の字なら上から三分の一くらいに補助線を一本、『へん』の字なら左三分の一に補助線を一本引いてあげると良いそうです。
小林みやび(2014). 発達障害の子を育てる58のヒント GAKKEN
「口」の漢字が、一筆書きの四角になっているのはやはり直します。その他の漢字も、一年生の時は書き順に注意を促し、徹底させます。
三年生以降の漢字は、一、二年生で習った漢字の組み合わせのようですから、一、二年生の漢字を習っているときに、しっかりと書き順を覚えさせます。
ただ、同じ漢字を書くときに、北京の人と台湾の人では漢字の書き順が違う場合もある、と聞きましたので、大目に見られるときは大目に見てもよいのでは。 注意するときも、「惜しい! 字はきれいなんだけどねぇ」などとヨイショしながら。
アメリカ、ロサンゼルス周辺には、教師が外国語と英語の二ヶ国語を駆使して各教科を教える、「二ヶ国語プログラム」を採用している公立校が多数あり、日本語と英語の二ヶ国語のプログラムを取り入れている学校も数校あります。
そのようなプログラムを推進する理由として、以下の力が強化されると謳われています。
英語での学習においては、わずか26文字のアルファベットからなる言葉を書いたり読んだりするため、文法はもとより、変則的なスペルや発音を覚えるのが日本語の学習と違う、難しいところです。
日本語の方は、読み書きするには、46文字ずつのひらがな、カタカナに加えて、1000文字以上の漢字を知らなければいけない、というのがチャレンジです。そして漢字を書くときには、止めたり跳ねたりはらったりを留意し、画数の多い文字を細かく手を動かしながら書き上げることが必要です。
このように二つの言葉の違いを少しあげてみただけでも、一ヶ国語だけで学ぶよりも二ヶ国語で学ぶ方が、学習者の注意力がより必要とされることに気づかされるし、上記の力がつくことも期待できそうです。
脳ブームの先駆者、養老孟司氏によると、脳卒中などで脳の一部が壊れ、『読字障害』が出たとき、英語圏の人は全く字が読めなくなるが、日本人の場合、漢字が読めなくなる人とカナが読めなくなる人の二通りに分かれるらしい。それはつまり、漢字を読む脳の部位とカナを読む脳の部位が違うからなのだそうです(,:enago online: enago.jp/dryoro/)。
さらに、ゼブラのウェブサイト(zebra online: zebra.co.jp)によると、かなや漢字を書く時は読む時とはまた別の脳の部位を使うらしい。
かなを読む部位は、視覚野→左角回→ウエルニケ領野
漢字を読む部位は、視覚野→左側頭葉効果部→ウエルニケ領野
かなを書く部位は、ウエルニケ領野→左角回→体性感覚野
漢字を書く部位は、ウエルニケ領野→左側頭葉後下部→視覚野→左角回→体性感覚野
要するに、漢字を書く時に、もっとも多くの脳の部位を使っている。
この事実を知ってからは、子どもに漢字を習わせない手はない、毎日、漢字を書かせることは子どもの脳の発達に大いに貢献することになる、と思え、時として勉強を嫌がる子どもに根負けせずに教え続けられています。
ところで、「言葉」の練習用紙は、書き順入りのフォントを使って作りました。これはほんとうに大助かりで、製作者の方に大感謝です。
習ったことのない漢字は、自分の名前の一部であったとしても書かせないように家庭に指示を出している小学校があるそうです。間違った書き順で漢字を覚えないように、というのが理由のようです。
自分の名前を漢字で書きたい子どもには、その意欲を称えて、親か先生が個別に教えてあげたらよいと思います。子どもが、知りたい、と思った時が教え時、覚え時なのでは、と考えます。
「言葉」用紙にのっている未習の漢字は特に、学習者が書き順を守って書けているかどうか、指導者がしっかりと目を光らせます。
アメリカで日本語を習っている子ども達の多くは、カタカナを記憶に定着させるのに特に苦労しているようです。カタカナを習う時間が多く設けられていないからでしょうか。
日本の小学校でも同様で、カタカナに割く時間があまり多くないので、すべての字を覚えるのは二年生になってから、という学校もあるようです。
日本語にカタカナ用語が増えてきたとはいえ、ひらがなや漢字に比べると、カタカナの頻度は高くありません。しかし、海外に住んでいる学習者は、自分の名前やお友達の名前はカタカナで書くことがほとんどでしょうから、ぜひともカタカナを習得させてあげたい。
そんなわけで、「ヨミガナ」用紙に読みがなを書く時には、必ずカタカナで書くようにします。カタカナが思い出せない場合は、用紙の下のカタカナを読んで答えを選び、解答欄に書きます。でも、なるべく見ないで読みがなが書けるように、学習者を励まします。
「ヨミガナ」用紙は、一学年前に習った漢字を選択肢の欄に書込むようになっているので、漢字の復習を兼ねます。
記憶は繰り返し思い出すことで定着するらしいので、一度に漢字を何度も書いて覚えようとするより、数日後、また数週間後、数か月後という風に同じ漢字を勉強する方法が有効だそうです。
「ヨミガナ」用紙が終わったら、選択肢の漢字を指さしながら、この漢字は何?と学習者に聞き、読み方や意味が理解できているかどうかを確認したり、以前使った漢字カードを引っ張り出して、その漢字の読みや言葉を復習。
さらに調子が良いときは、その漢字、言葉が入った文を作って言わせてみるのもよいです。
漢字カードで言葉を習っても、意味や使い方が分からないことがあると思います。そんなとき、辞書やインターネットを使って調べるのも一つの手ですが、なるべく読む行為を増やし、文脈に基づいて言葉の意味を理解していくのが、よりネイティブに近い言葉の習得法だろうと思います。
学年相応ではない難しい言葉や漢字も入っている「詩と文」ですが、指導者の助けや、下の段のひらがな表記を参照にしながら毎日読むことで、一週間が終わるころには学習者が自力で読めるようになっているのが目標です。
この指導方法については、以下の「幼稚園児も漢字が読める」をお読みください。
1.印刷した用紙を半分に折り、漢字入りの文と、ひらがなのみの文が分かれるようにする。
2. 漢字の入った文の方を音読する。漢字の読み方がわからないときは、ひらがなの表記を見る。指導者に読み上げてもらうか、音声を聞きながら文を目で追うのも良い。
3.文を覚えるほど音読したら、四百字詰め作文用紙に書き写す。指導者が読み上げたものを書き取るのが良いが、難しい場合は、ひらがなのみの半分を見て、出来る限り下線が引っ張ってある言葉を漢字に直しながら書き写す。
とある教育熱心な幼稚園では、漢字がたくさん入った本を毎日読んで聞かせるそうです。園児一人一人に本を渡し、園児は先生が読んでくれる文を指でなぞりながら聞く。一ヶ月毎日、同じ本を同じ方法で読むそうです。
一か月経ったころに、その本に出てくる漢字の言葉をボードに書き出すと、園児たちはその言葉が読め、意味も分かるようになっているとのことです。
「詩と文」には、まだ習ったことのない漢字もたくさん入っているので、指導者がまず教えてあげる必要があります。指導者の日本語が流ちょうでない場合は、「音声での読み上げ」機能を使うのも一つの手段です。